先日、赤十字病院内の薬局に勤める薬剤師さんと話をする機会を得ました。日本人の私には「日赤」という病院は全く違和感のない存在なのですが、ドイツでローテス・クロイツ(Rotes Kreuz)病院というのが思い浮かびません。それで、少し調べてみることにしました。
赤十字社について スイス人実業家アンリ・デュナンが1859年に「人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性」の原則を掲げて創立した人道的活動団体です。現在、世界180余国に「赤十字社」と「赤新月社(主にイスラム諸国)」という名で、中立の立場で人道支援を行っています。 主要な活動は、 ・災害時・紛争時の傷病者の救護活動 ・戦争捕虜への人道的救援 ・赤十字の原則と国際人道法の普及と促進 ・平時の災害対策・医療保険・青少年育成 といった幅広い分野にわたっています。その活動のために、戦時国際法「ジュネーブ条約」とそれに基づく各国の国内法で、特殊な権限を与えられています。
ドイツ赤十字社について 上述したように、赤十字病院というものを聞いたことがなかったのですが、調べたところドイツにも52病院が置かれていました。(ちなみに日本は92病院)私が住むバーデン・ビュルテンベルク州(人口約1080万人)には、州都シュトゥットガルトに1病院あるだけで、そのため、なじみがなかったようです。 ドイツ人にとって赤十字社のイメージは、救急搬送と(救急でない)病人搬送(日本でいう民間救急搬送)です。日本では救急搬送は消防署等の公共機関が行っているようですが、ドイツでは赤十字社や教会といった機関がその主力となります。その中で赤十字社は年間平均で、緊急搬送190万回、病人搬送290万回出動ということで、最大規模となっています。ちなみにドイツでは毎年国民の7人に1人が救急車か病人搬送車を要請しています。人口が8175万人なので1168万回ということになります。その約40%が赤十字社によって行われている計算です。
そのほかにドイツ赤十字では以下のような活動を行っています。 ・高齢者に対して 訪問介護、デイケア、高齢者専用アパートや介護ホームの運営、給食の配達、スポーツ講習の運営、買い物や家事代行などの生活支援、介護・福祉用具のレンタル、旅行同行、緊急通報システムの運営 ・健康に関して 病院の運営、血液事業、病人搬送、療養施設の運営 ・身体障害者に対して デイケア、ホームの運営、移動の補助、授産施設の運営、レクリエーション施設の運営 ・青少年・ファミリーに対して 全国で1200の幼稚園の運営、ベビーシッター講習と斡旋、レクリエーション施設の運営、家族計画のアドバイス、青少年厚生施設の運営、母子/父子療養施設の運営 ・救援活動 山岳救助、水難救助、催し物への救急車の派遣/待機、災害時の生活援助、災害救助犬の派遣、救急法講習会の運営、家族へのメンタルケア
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