1804年にアヘンからモルヒネを単離し、近代薬学の基礎を築いたドイツの薬剤師フリードリヒ・ゼルチュルナー(Friedlich Sertürner、1783〜1841
年)の遺品が、ドイツ薬事博物館のコレクションに加わりました。
アヘンは古くから鎮痛薬・催眠薬として利用されていました。既に紀元前3500年頃のメソポタミアでアヘンを採取するために、ケシが栽培されていたことが楔形文字からわかっています。ゼルチュルナーは、同じ量の薬剤を使用しても、その効用に差があることに疑問を持ち、特に重要な薬剤であったアヘンを使ってその効用成分の単離に成功し、その結果を1806年発行の『薬事ジャーナル』に発表しました。パダーボーンの薬局で薬剤師助手を勤めていた23歳のときのことでした。彼はこの成分にギリシア神話の夢の神であるモルペウ
スの名をとって「モルフィウム」と名づけました。これがアルカロイドの単離・抽出の始まりでした。
木製のケースに収められた遺品はゼルチュルナーの子孫のもとで保管され、これまで存在も知られていなかったものばかりです。その内容は70種類を越える文書で、論文下書き・清書・訂正されたゲラだけで
300ページ以上、実験のスケッチ、薬剤師修業中の成績書、ヨーロッパ各国の学会から与えられた会員証明書、フランス学士院から贈られたモルヒネ発見者としての認定書、また夫人に宛てた手紙を含む私書です。またこれまで知られていなかったゼルチュルナー夫妻の肖像画も含まれています。
ドイツ薬事博物館では非常に難解なゼルチュルナーの筆を、没後175年にあたる2016年をめどに解読して、インターネットで公表する意向です。

(写真提供:ドイツ薬事博物館)
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