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り
甘草‐2012年の薬草
ドイツ便り/ 2012年05月09日更新

以前このサイトで、2010年の薬用植物「丁子」を紹介したことがありました。今回はヴュルツブルク大学医学史研究所が、自然保護基金(WWF)と国際自然保護連合(IUCN)と共同 で選 んだ2012年の薬用植物「甘草」を紹介します。 甘草はマメ科の多年草で、多くの種があって、地中海沿岸、東アジア、アメリカ大陸、オーストラリアで自生しています。薬用に使用するのは根で、今日では400を超える構成物質 が存 在することがわかっています。その中でも重要なのがグリチルリチンで、砂糖のおよそ50 倍 の甘味をもち、炎症を押さえ、粘膜を守る効用の上に、抗ウィルス、鎮痙の薬効も証明されています。
古代エジプトや古代ギリシアの医師は、咳、しわがれ声、喘息に対して甘草を処方ました。中世ドイツの修道女で医学・薬学にも長けたヒルデガート・フォン・ビンゲンは、甘草の働きで「ソフトな声」を発するのは、聞く人の心理に良い影響を与えるとしています。 今日では、鎮咳、去痰をはじめ、便秘、胸やけ、胃腸炎、十二指腸潰瘍、リューマチの治療 な ど広範囲で使用されています。漢方薬でも緩和作用、止渇作用のある生薬として広く使われています。日本では美白化粧品の材料にもなっています。
ドイツはヨーロッパ最大の甘草消費国で、年間500トン以上を輸入しています。その大半は薬用茶として利用されています。またドイツ人が好んで食べる「ラクリッツ(リコリス)」というお菓子の主要な原料で、その風味は多くのハーブ酒にも使われています。
カロリーが低い甘味料ということでダイエット効果が期待されますが、グリチルリチンには低カリウム血症、高血圧や浮腫という副作用も発見され、EUの食品科学委員会(Scientific Committee on Food – SCF)では1日の摂取量を100ミリグラム以下にするように推奨しています。また2005年に出されたEUの法律で、1キログラム当たり100ミリグラム、1リッター当 たり10ミリグラムを超えるグリチルリチンを含む食料品や飲料には、それを提示することが義務付けられました。




この絵はドイツ薬事博物館が所有する1595年発行のヒエロニムス・ボック(Hieronymus Bock)の薬草書からの抜粋です。

(※文章および写真・図版の転載・流用を禁じます)

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